漢字の多用がベスト?テープ起こし時の表記

テープ起こし、といいますか日本語で文章を作成する際、気になるのは単語の表記です。この言葉は漢字で書くべきか、平仮名で書くべきか、片仮名で書くべきか、漢字で書くならどの漢字を当てるべきかなどなど。当社では原則的に日本速記協会が発行する『標準用字用例辞典』に準拠した表記を採用しています。常用漢字をベースに、時勢に合わせて都度改訂が行われている辞典です。

例えば「かわる」は「変わる」「代わる」「替わる」「換わる」とありますが、この辞典では「変わる」以外はすべて平仮名表記「かわる」と表記するように示されています。「変わる」は本質の流動、見た目は同じだが中身が変化したようなイメージです。「人が変わる」はその人の性質が以前と異なるの意味で、「担当者がAさんからBさんに変わった」は間違いです。「代わる」「換わる」「替わる」の境界は非常に難しいです。特に「換わる」「替わる」があいまいです。『標準用字用例辞典』ではこれら3つはすべて平仮名で表記します。

こういった基準は必ずしもこの辞書でなくてはいけない、というのは私的な文書では存在しないと思います。継続的な、あるいは共同的な文書作成作業をする中で、よりどころとなる基準としてディレクターが任意に決めるものです。こういったものを何かしら決めておかないと、個人個人の偏った恣意の表記になってしまい、校正する人が大変です。正規の漢字だと思っていたら実は当て字だった、ということは多々あります。また、表記の基準が何もない人は、同一ドキュメントの中で同じ意味の言葉を理由なく複数の表記にしてしまって気づかないことが多いです。1つの文章の中に「食べる」「たべる」など表記が混在していては、プロがつくった文章とは言い難いです。読むほう(発注者)も、何だかいいかげんな仕事だなと感じるでしょう。(文学・文芸作品ではこの手の混在はよく見かけますが、文学・文芸は表記の混在も表現のうち?なので余り気になりません。字幕も「この文字数・時間枠の中にこの意味を盛り込む」という制限があるので表記統一はあいまいとなるでしょう。ウェブページもSEO的に、あえて表記を混在させることがあります)

個人的には基準は何でもいいと思います。重要なのは「統一されていること」です。そしてその文章の対象としている読者の多くが読めるであろう漢字を使うこと。それをベースに、例えば資料があり、資料と自分が基準としている辞書の表記が異なる場合は資料の表記に従うのがベターでしょう。資料(見本)は同じテーマの直近の完成品であることが多いです。雑誌なら前号、議事録なら前回のもの、という感じです。ここに示された表記がたとえ一般的ではなかったとしても、依頼者側がそれを採用しているということは何か意味があるととらえ、その表記を尊重しましょう。ただ、依頼者側が表記にこだわりがなく、資料中で同じ意味の言葉の表記が混在していることがよくあります。こういう場合は自分の辞典の表記を優先させ、その表記で統一しましょう。横浜市行政の案件ですと、「子供」は徹底して「子ども」となっています。これは内規がありそうです。でも「こども青少年局」という部署もあります。難しいですね。

テープ起こしライターを目指す方がどこかから仕事の依頼を受けた際は、そこで規定している辞典があれば、その辞典に即した表記を用いますが、自分でも何か1つは寄る辺となる表記を持っておくとよいです。『標準用字用例辞典』は常用漢字ベースなので、この表記を身につけておけば、違う表記を指示されてもそのベースからのアレンジとなり、対応が楽かと思います。基準とすべき表記がまだない人は『標準用字用例辞典』でスタートすることをお勧めします。

横浜・横浜市周辺で統一された表記のテープ起こし・文章校正は「合同会社ハルクアップ」