裁判証拠としての会話録音反訳書
テープ起こしの依頼で訴訟用の会話録音反訳をという案件があります。刑事事件(交通事故等)は法律事務所経由のものが多いですが、一般の方からのものでは、やはり離婚(調停離婚)における夫婦の会話の録音が多いです。
通常、この手の会話はいわゆる「隠し録り」をされているのですが、その録音データは聞き取りづらいものが多いです。テープ起こしストは耳がよい? 「録音環境の大切さ」の記事でも触れましたが、良質の反訳書を作成する最大の決め手は録音時の環境です。繰り返しになりますが、以下の点に注意して録音されると、よりよい反訳書ができ上がります。
- 近くに大声で話す人がいない場所で録音する
- 店員さんが「いらっしゃいませー」などとやまびこをするようなところも避けたいです
- BGMがかかっている場所で録音しない
- 音量にもよりますが、特に歌モノの曲がかかっていると、会話の周波数と被ってしまい聞き取れない箇所が多くなります。
- 自宅等の場合はテレビなど、音の出るものを消す
- テレビやラジオは普通の会話が流れていることが多いので、これも歌同様、会話と被ってしまいます。
- 着衣内に録音機を隠す場合は、衣づれの音がなるべくしない場所に隠す
- 服がすれる音が多く起こる場所に近いほど、そのノイズが録音されてしまいます。外部マイクをつけ、外部マイクだけポケットの外に目立たぬように露出させておけば、録音機本体がポケット内で擦れても影響はありません。
- 自分より、相手に近い場所に設置する
- 自分の発言より相手の言質をとることがこういった録音の主目的だと思います。であれば、相手に近い場所に録音機を置くほうが相手の発言が大きく録れますので、なるべく相手付近に置きましょう。
「証拠」とは「第三者がわかるもの」
「隠し録り」は目の前に録音機材(ICレコーダーやテレコ)を置くわけにはいかないため、なかなかベストな状況での録音は難しいですが、証拠として残したいものである場合は、上記の注意点を留意して録音するようにするとよいでしょう。静かな環境であればあるほど、きれいな録音が可能です。証拠とは当事者ではない第三者にわかるもの、なので、「だれが聞いても聞き取れるもの」を残すよう心がけましょう。
録音日時・録音場所は必ず記録
また、押さえておくべき情報としては以下です。
- 録音日時
- 録音場所
証拠なので、日時はしっかり覚えておきましょう。「これはいつ録音したのか?」「覚えていません」これでは第三者には、きのうの会話なのか、10年前の会話なのかわかりません。時系列に沿って話が進む場合、Aの発言はBの発言以前なのか、そうではないのか、などの順序も大事な要素となります。なので、録取日はしっかりと記録しておきましょう。会話自体の開始の前に、録音の冒頭にご自身で「○年○月○日○時○分 ○にて○との会話を始めます」など吹き込んでおくとベターです。その際、一たん録音を開始したら、会話が終わるまで録音を中断しないようにしましょう。録音の中断が「意図的な編集」と思われては元も子もありません。
提出する音声メディアの形式
通常の証拠調べでは音声自体を裁判所で聞くということはないと思われます。なので、反訳書がすべてとなります。音声メディア自体もあわせて証拠として提出することはありますが、音声メディアは通常のカセットテープか、ウィンドウズパソコンで再生できるデータファイル形式(wav,mp3等)の提出を求められると思います。弊社でこの手の音声反訳を受注し、録音会話が携帯電話のメモリカードなどで録音されたものの場合、ウィンドウズパソコンで再生できる形式のCDまたは音声ファイルに変換し、反訳書とともに納品します。
反訳書の証拠能力
民事訴訟は「自分に有利な証拠を可能な限り自分で集め、それを第三者(裁判官)に認めさせる」ことが重要な要素です。会話録音が証拠になるかどうかは裁判所が決めますが、「これは証拠足り得る」と認められるためには、きれいな録音と忠実な反訳書であるほど、証拠能力は高くなるはずです。ちなみに反訳書は当事者が自分で聞き起こし作業をし、作成しても全く問題ありません。その場合は、自分の都合のよいように内容をねじ曲げては証拠の意味がないので、会話を忠実に反訳するよう気をつけてください。
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