スカイプとは何か auスカイプ付き携帯が失敗するであろう理由

 au(KDDI)がスカイプを使える携帯電話を発表した。「禁断のアプリ」と大仰にうたっているが、スカイプが何であるかを知らない人にとっては、何が禁断なのか気になるところであろう。そこで、PCでではあるが、日ごろ普通にスカイプを利用している一ユーザーとして、「スカイプとは何ぞや」ということと、恐らくauのスカイプ対応携帯電話は成功しないであろうということを述べてみる。

スカイプとは、無料通話ができるアプリケーションソフトである?

 スカイプ(skype)とは、インターネット回線を利用した通話ソフトである。いわゆるIP電話の一種である。IP電話は、パソコンでADSLや光通信回線を引いていれば、その回線を利用して格安で固定電話へ発信・通話ができる。同一プロバイダー同士なら通話無料という場合もある。ご自宅や勤め先の電話がこの仕組みを使っているところは多いであろう。スカイプはこの電話の一種と考えて差し支えない。こういった高速常時接続インターネット回線環境があれば、スカイプを利用して無料または格安で音声通話ができるのである。

 スカイプを使う、とは、すなわちスカイプというソフトをパソコンにインストールするということである。スカイプは無料でダウンロードできる。マッキントッシュでも利用可能。スカイプをダウンロード・インストールし、自分のIDを設定するだけで利用可能である。

 この時点でも無料で通話できるが、同じようにスカイプをインストールした相手に限る。つまり、「相手のスカイプID」を知らなければ、だれとも無料で通話はできない

通常の電話番号への発信は「有料」

 スカイプから普通の電話番号にかけることも可能であるが、これは有料となる。スカイプクレジットというものを先に購入(普通の電話の後払いとは違う)し、それを従量課金で消費しながら、通話する形となる。2010年10月現時点での料金は、日本国内固定電話へは2.66円/分 + 接続手数料9.9円(1通話につき)、日本携帯電話へは17.50円/分 + 接続手数料9.9円(1回につき)となっている(過去記事「スカイプの発信通話料金の謎を解明する」参照)。

 固定電話あるいは携帯電話への定額プランも用意されている。これも先払い(ミニマムチャージ3カ月分)である。固定電話へは¥690/月を支払うことにより、固定電話へ実質無制限の通話が可能となる。プラン詳細はスカイプ公式月額プランにて

 月額プランを利用することで、電話使用量によっては、けた外れな割安料金で音声通話が可能となる。逆に先払いの分、あまり利用しないと、かえって割高となる。

通常の電話からの受信も「有料」

 スカイプをインストールしても、それ自体は電話番号を持っていないため、普通の電話からの発信を受信できない(番号がないため、当然かけられない)。外部の一般電話からの発信を受信するためには、オンライン番号を購入する必要がある。これも最低3カ月先払い、月額プランとかけ合わせることで割引がある。オンライン番号を購入すると、050で始まる、いわゆるIP電話番号を付与される。この番号を他へ告知することで、固定電話や携帯電話からの受信が可能となる。ちなみに固定電話からスカイプオンライン番号への通話料金は全国どこからかけても一律11.025円/3分である。

スカイプ同士は無料、スカイプ対電話は有料

 つまり、スカイプはスカイプID同士での通話は無料で、スカイプを使って通常の電話に発信する、あるいは電話からの発信を受信する場合には有料ということになる。また、これは基本料金であるが、パソコンならプロバイダへのインターネット接続料金、携帯ならキャリアへの「パケット通信料(インターネット利用料金)」が月々に必ずかかる有料部分となる。

 auスカイプの「禁断」は、「無料通話が可能」という機能を指すのは明白であるが、上記のように、現行のスカイプで無料通話(インターネット接続基本料金を除く)が可能なのは、受信した相手もスカイプである場合のみ。つまり、お互いにスカイプIDを知っていなければ無料にならないのである。これは非常に狭き条件である。
 ちなみに自分が直近100人ぐらいの新しく知り合った人で、メールの署名や名刺にスカイプIDを記載していた人は、たった1人。また、自分はいつもメールの署名にスカイプIDを記載しているが、かかってきたことは一度もない。

スカイプナンバーディスプレイは「非通知」

 また、これは日本での規制で、仮にオンライン番号を所有したとしても、「スカイプの番号は発信者番号通知がされない」ということ(この詳細は以前の記事「SkypeInオンライン番号の発信者番号通知実験」参照)。スカイプIDの通知はいわずもがな。
 例えば企業等への発信利用ならば、番号非通知であっても相手は出てくれるであろうが(驚くことに、たまに企業でも非通知拒否しているところもある)、普通の携帯電話へ非通知でかけてもまず出てくれないであろう。
 多くは非通知と表示されるが、ほかには8521991025285219890251という番号が表示されることを確認している。まれに正しく050あるいは50で始まるオンライン番号が表示されることもある。

発番号通知・パケット通信料がauスカイプ電話の成功のかぎ

 このように、スカイプは無料というのはほんの一部の機能で、本気で電話として利用するにはさまざまな料金がかかる。それでも携帯電話の通常の通話機能で発信するよりは圧倒的に安く済むことは間違いない。特に海外への国際電話は格安であろう。

 だが、金銭コスト以上に、日本のスカイプは発信者番号通知ができないという強烈なアキレス腱がある。

 auスカイプ電話の機能や料金の詳細は現時点ではまだ発表されていないが、auスカイプ電話がau携帯そのものの電話番号をスカイプオンライン番号として利用でき、その番号が相手電話のディスプレイへ表示される、そしてパケット通信料が定額で低く抑えられていれば、爆発的成功をするかもしれない(パケット定額プランを契約せずにスカイプを利用しまくってウン十万の請求、というニュースも出てくるかもしれない)。しかし、上述したような現行のスペックのままなら、一部若者や家族間、企業内での利用、すなわちお互いのスカイプIDを原則的に知っている者同士の利用にとどまってしまうのではないかと推測する。

 スカイプにはここで説明した機能以外にも、ビデオ通話・多重会話など、さまざまな便利な機能がある。auがどのような機能・料金の設定をするかで携帯電話のパラダイムを変える可能性も秘めているが、「au スカイプ付き携帯 パソコン向け通話無料 (毎日新聞) – Yahoo!ニュース」(2011.8現在、リンク先記事なし)によると、「携帯と競合する、国内の固定電話や携帯向け発信はできないようになる見込み」とあるので、過剰な期待と「無料通話」の字句に踊らされぬように注意し、本発表を期待して待ちたいところである。