【音声文字起こし】Versus 天龍源一郎vs輪島大士対談その2

FIGHTING TV サムライの対談番組『Versus』の「天龍源一郎vs輪島大士」対談音声文字起こしパート2です。ちょっと入れかえたり、整文してます。パート1はこちら


○天龍 ……頭にきたのを覚えてますよ。
○輪島 あのときはちょうど、幕下の一番けつからだったからね。今の時代は学生横綱とかアマチュア(横綱)を取ったら10枚目か何かでしょう。
○天龍 僕が幕下のときに、輪島さんと一番当たる可能性が高かったのは、初日に僕が勝ったんですよ。で、輪島さんが幕下の一番けつで全勝優勝して、六枚目か七枚目に行ったでしょ。
○輪島 八枚目!
○天龍 八枚目ね。そのとき、僕は幕下の七枚目か六枚目だったんですよ。そのときに、僕が勝って、輪島さんが勝って、次に僕が勝ったら……。千代桜(?)というのがいたんですね。
○輪島 いたいた。
○天龍 僕がそいつに勝って、輪島さんが勝ったら、2日目は僕と輪島さん(の取組)だったんですよ。それで、輪島さんがその2日目に当たったやつに僕は負けたんです。それで当たらなかったんですよ。
○輪島 へえ。
○天龍 内心はでも、ほっとしたけどね。
○輪島 いやいやいやいや。
○天龍 負けたらおれ、格好悪いなと思ってね。そうしたら、おれはそいつに負けて、おれに勝ったそいつが輪島さんと当たったんですよ。そいつも負けちゃったけどね。(輪島さんは幕下で)2場所連続優勝したから。
○輪島 へえ。(他人事のように)
○天龍 何かね、微妙に人生、すれ違っていってるんだよね。
○輪島 すれ違いもあるし、そんな、運があるんだねえ。やっぱりそうやって聞いてみると。
○天龍 もっと覚えているのは、輪島さんが十両か、幕の内のけつっぺたに上がったすぐぐらいのときに、あのころ三役にいた人たちが、巡業で輪島さんとけいこして終わってきた後、「強いな、輪島」って言ったのを覚えているんですよ。
○輪島 へえ。
○天龍 三役の経験がある人が、「あいつ、強いよ」とかって。おれは付き人だったから、背中を流しながら、その人と話してるわけよ。「輪島、強いなあのやろう。左、かたいよ」とかさ、「おっつけ、めちゃめちゃ強いんだ」とかっていう話をしてるのを「ああ、そう。強いんだ」って思いながら聞いて。そんな印象がある。
○輪島 へえ。懐かしい(笑)。
○天龍 ずっと、そういう印象だった。まあ、後年、WARのマネジャーにもなるんだけど、坂下(博志)君とかがよく、横綱のマネジャーみたいなことをやってくれてましたね。
○輪島 はいはいはいはいはい。ふふふふ。
○天龍 試合場に来るのにひとりで来なくて、マネジャーみたいな一般の人を連れてきたり、外車で出入りし始めたのは、横綱(輪島)が一番最初だもんね。まあ、おれたちは「あのやろう」と思ってたけどね(笑)。
○輪島 みんな、反感が。けとばされたよ、おしりを。ふふふふ(笑)。うちの運転手が、「何でけとばすの」って。
○天龍 でも結構、そうはいくかいってな感じで、自分を貫いてましたよね。
○輪島 ふだんは別にそんなことは考えなかったね。勝てばいいなっていう感じで。勢いがあったよね、あのときは。学生相撲がたくさん入っているじゃないですか。朝潮君でもそうだし、琴光喜君もそうだし、大学のがみんな大関でとまってるわけでしょ。だからもう、とまっちゃったらだめだからって、2場所3場所でもう、自分はガッと行ったのがよかったのかなと思ってね。
○天龍 僕も前頭の筆頭まで行ったときに、上はもう三役ですよね、そのときに、今でも覚えてるんですけど、3勝4敗だったんですよ。次の日に栃東にたまたま負けたんですよ。たまたま負けたけど、あのころまだ21(歳)か22ぐらいだから、こんなのいつでもチャンスが来るよと思って、たかをくくったけど、二度とチャンスは来なかった。
○輪島 ふふふふ(笑)。
○天龍 いや、本当に、行くときは一気に行かないとね。
○輪島 そうそう、絶対にそうですよ。とまっちゃったらね。
○天龍 今の若い人たちにも、チャンスを一気につかんで、つかんでから考えればいいんだよって。躊躇しちゃったら行けないよね。
○輪島 だけど、(年間)6場所あって、チャンスがあるわけだからね。大関に上がって、何で横綱になれないのかって、これだけの人材がね、私の後輩が何十人も入ってるわけでしょ。30何名入ってるわけだから。何でここでとまっちゃうのかなって思って。それがすごく……
○天龍 だからみんなおれと同じように、チャンスなんかいつでも来ると思ってるんですよ。でも来ないんだよねえ。これ、本当に不思議なことに。だから、おれなんかから見てみれば、そのときそのときでぽっぽって次に行って、次に行ったらまた自分が鼓舞されるじゃないですか。ここにまた来ようって。それが結局、エネルギーになったんだと思うんだよね。
○輪島 だから一番自信がついたのが、関脇で初優勝したときに、そのときはもう本当に……
○天龍 聞くところによると、そのときにご祝儀をもらって、めちゃめちゃ元気が出たらしいじゃないですか。小切手でご祝儀をもらって、「輪島君、これ、はい」って(普通に)「ありがとうございます」ってパッと(金額を)見て、「え?」って思ってもう一回戻って(最敬礼して)「ありがとうございました!」ってあいさつし直したっていう話が有名ですよ。
○輪島 それ、だれに聞いたの。あははは(笑)。
○天龍 相撲界ではだれでも知ってますよ。
○輪島 最初は大した額じゃないと思ったの。で、妹にこれ、貯金にちょっとって渡したら、違うんだよ、ゼロが。おいおいおいって。持ってこいって(笑)。それで1週間で終わっちゃった。
○天龍 ああ、そう。使い切っちゃったの?
○輪島 だから、意外とね、金があれば何か買いたいって、車を買ったり。
○天龍 それがまた、自分のステータスになった。
○輪島 うん。また稼げばいいなって。今度優勝したら車を買いたいなとか。じゃあ、ベンツにしようか、今度はこれにしようか。やっぱりそういう目的があったんですね。
○天龍 そうですね。あのころのお相撲さんは、どんなに偉い人でも、タクシーで乗りつけていましたもんね。マイカーを持ってる人っていなかったですもんね。
○輪島 だから、自分はその関脇で優勝したときに、優勝の金を持って、まだ覚えてるけど、車屋に行って、中古のスポーツカーを買ったの。あのときは、200万円ぐらいだったかね。そのセールスの人が運転したんだ。運転手はまだ関脇でいないから(笑)。「頼むよ、その条件だよ」って言ったら、「わかりました!」って。大関に上がれば、運転手は協会もオーケーだから。その運転手が隣の小料理屋のお父さんで、毎日運転してくれた(笑)。
○天龍 皆さんは知らないけどね、輪島さんはね、人を使うのがめちゃめちゃうまいからね。
○輪島 いやいやいやいや(笑)。
○天龍 本当に。だれかれなく、すぐに助手にしちゃうからね。
○輪島 だから、そういう点はすごく運がいいというかね。
○天龍 でも、人にも恵まれましたよね。
○輪島 やっぱり、みんないい人ばかりに出会ってね。今の人生でもそうだけど。
○天龍 輪島さんね、どうのこうのじゃなくてね、輪島さんが裏切らなくて、真っ向にやってるから、そういういい人が寄ってくるんですよ。
○輪島 へえ。ありがとうございます。ふふふ。
○天龍 おれは集まってこないんだよねえ。
○輪島 いやいや、そんなことないよ。これから、これから。
○天龍 「これから」って、あともう、人生ないですよ(笑)。
○輪島 はははは(笑)。まだまだ大丈夫。うん。(適当っぽく)
○天龍 それで、(輪島さんが)プロレスに転向する前に、おれと石川がサンフランシスコにいたでしょ。
○輪島 そうそうそう。(2人から)電話がかかってきて。だれからだろうって思ったら、「おい、おれだよ」って。
○天龍 サンフランシスコで石川と2人でいて。あのころ(現地で)、日本の相撲を放送してたんですよ。だから石川が、「天龍さん、輪島さんに電話しましょうよ」って言って。「え、電話(番号)知ってるの?」「電話しましょう」って。サンフランシスコだから1日おくれか、夜遅くに放送していて、輪島さんの現役を見て、それで、「あ、電話しよう」って電話して。で、輪島さんが出てくれて、石川からおれにかわって、それだけで終わるのは嫌だから、「いやあ、輪島さん。もう、ここにヤンキーの女の子がいっぱいいるんですよ」とか言ったら、「おまえ、何言ってるんだよ、このやろう」とかって話して。「もういいから」……
○輪島 電話賃が高くなるから。あはははは(笑)。
○天龍 最初、英語で「コレクトコール、オーケー?」って言ったら、輪島さんはわからないから、「は? は?」って。それで石川が、「輪島さん、何でもいいからオーケーって言ってください」って言ったら「オーケー、オーケー」って言って、コレクトコールで電話してね。くだらねえ、「女が隣に」とかさ。
○輪島 そうそうそう(笑)。結構、長かったよ、あのとき。
○天龍 石川と2人で、そうめん食って。試合に行ったって、25ドルしかもらえないからね。
○輪島 あのとき、そう? へえ。
○天龍 そう。25ドルしかもらえないし、どうしようもないから、きょうはもう行くのをやめて相撲でも見て話しましょうって言って、じゃあ輪島さんに電話しましょうって電話して。それで、そのころ、本当に、姉ちゃんがとかこれ(口)ばっかりで。石川と2人で、だれもいなくて、寝るベッドもなくて。石川のところに行ったら、何にもなくて。おれなんか一番最初に石川のところに行ったときに、寝るものがないからカーテンを外してカーテンにくるまって寝たんだから。
○輪島 へえ。そんなときがあったんだあ。へえ。
○天龍 めちゃくちゃでしたよ。
○輪島 ああ、そうなの。ふふふふ(笑)。
○天龍 横綱は何でまた、プロレスに? あのころは、相撲からプロレスはなかなか行こうってならないじゃないですか。
○輪島 うん。もう40(歳)近くて。
○天龍 そうですよね。38ですよ。
○輪島 それで、石川が来て、ちょっと馬場さんと相談してみて、1年あたり、いろいろともやもやがあったから、アメリカで、ちょっと、こんなにやせてても大丈夫なのかって聞いてくれって言ったら馬場さんがすぐにオーケーしてくれて。それからすぐにハワイに行って、セントルイスに行って、バッファローに行って、ノースカロライナに行って。それでネルソン・ロイヤルのところに行って。
○天龍 僕はその輪島さんと電話で話をした後に、フロリダに行ったんですよね。フロリダに行ったときに、フロリダに、エド・ウイスコフスキーっていう全日本プロレスにしょっちゅう来ていたレスラーがいたんですけど、そいつが肩幅が広くてスラッとして、輪島さんの体型にそっくりだったんですよ。パッと見たときに、たまたま輪島さんとくだらない話をした後だったからかもしれないんだけど、ああ、輪島さんの体型に似てるなと思って、輪島さん、プロレスに来ればいいのなあって。こんな感じで肩幅が広くて、プロレス向きだなあって思ったのを覚えてるんです。
○輪島 ああ、そう。そのときに思ったの?
○天龍 そのとき、たまたま電話した後だったからか、プロレスに向いてるのになあって思ったんですよ。またおもしろかったのはね、輪島さんが来るときも、輪島さんがプロレスに入る云々のちょっと前ぐらいに、若島津がプロレス転向とかっていう話があったでしょ。
○輪島 そうそうそうそうそうそうそう。
○天龍 これもまたおもしろいんだけど、東京駅で(新聞を見たら)「島」しか見えなかったんですよ。「島、プロレス入り」って書いてある。こんなふうに折ってあったから。ああ、若島津が来るんだと思って、パッと見たら、「輪島」。「輪島?」ってびっくりしたのを覚えてる。「島」の字が見えたから、あ、若島津だなって。話に出てたから。
○輪島 まさかと思って。
○天龍 若島津だなって思って、「島、プロレス」ってあるから。「入り」が見えたのかな。こう差してあるから、「島、プロレス入り」ってあって、ああ、若島津が入ってくるんだって、パッと見たら、「輪島、プロレス入り」って。「輪島? うそ?」ってびっくりしたのを覚えてる。
○輪島 そりゃそうだろうね。もう年だったしね、あのときはね。
○天龍 いや、本当に全然、これっぽっちもキャッチしなかったからね。本当にこれ(口に指を当てて)、うまいねえ。
○輪島 何を言ってる。うふふふふ(笑)。これ(口チャック)だった?
○天龍 これ(口チャック)で(笑)。
○輪島 だから、やっぱり、あのときは全日本プロレスに入ってね、やっぱり天龍さんとかジャンボさんとか、いろんな人にお世話になったっていうのは、すごく恵まれてたんですよね。みんなかわいがってくれてね。みんな「横綱、横綱」って言ってね。
○天龍 いや、僕はね、輪島さんが入ってくるっていったときにね、石川と2人で、じゃあおれたちでがっちりとガードを組んで守ろうって、石川と話してたんですよ。
○輪島 へえ。
○天龍 それでまあ、いろんなことがあって、それでおれたちが、輪島さんは横綱だから、ちゃんとして……。だからみんな、何て呼んでいいかわからなかったんだよね。おれが「横綱、横綱」って呼んだら、みんなが「横綱、横綱」って呼ぶようになったんですよね。
○輪島 ねえ。ありがたいことですよ。
○天龍 ねえ。知らなかったからね。みんな、どう接していいかわからなかったんですよね。
○輪島 デビュー戦のときもね。
○天龍 タイガー・ジェット・シン。
○輪島 天龍さんが、「追っかけていけ!」って言って。あのときのことも覚えてますよ。
○天龍 おれが一番覚えてるのはね、輪島さんのデビュー戦でね、悪いけど、輪島さんの試合でタイガー・ジェット・シンが……(動画終了)

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