【動画音声文字起こし】「日本の借金」解説by麻生太郎

文字に起こしてみました。2012年12月のものっぽいです。

これみんな、それぞれ職業も違うしあれも違うんだろうと思いますが、ぜひ、今の京都の方の話ですけど、世の中で間違ってマスコミが流し、多くの人が信じている話が1つあると思います。それは日本という国が破産するという話。

 よくね、自分で会社を経営してる、お店をやってる、自分で帳簿をつけてる……。いわゆる簿記というものの基本がわかってない人がしゃべってる、わかってない人が書いてる、わかってない人が読んでるから、もういよいよ話がわかんなくなってるんだと思います。今からわかりやすく例を説明するから。

 帳簿っていうのを見れば、まず貸方と借方と2つあるでしょうが。まあ簡単なことを言えば、今お金を借りているのは皆さんじゃありませんからね。お金を借りているのは政府です。お金を百、借りていれば、これは必ず百、貸している人がいなきゃおかしい。帳簿っていうのは左と右が必ずそろうことになっていますから、百、借りている政府がいるんであれば、百、貸している誰かがいる。誰が貸しているんです? そうです、国民が貸しているんだね。

 ところが新聞を見てごらん。子供や孫に至るまで「1人700万円の借金が」って。違うでしょうがって。700万円の貸付金が起きてるんですよ、あれは。貸してるのは皆さん。「いや、俺は国債なんて買ってないぞ」と言われるかもしれませんが、皆さんはお金を銀行に預けておられる。銀行の預金は、銀行にとっちゃあ借金ですから。帳簿の上で、銀行の預金は借金ですからね、銀行にとっちゃ。だから、その借金を誰かに貸してそのさやを稼がないと金貸しという商売は成り立ちません。銀行っていうのは、聞こえはいいけど、あれは金貸しをやっとるわけですから、金を借りる人がいてくれない限りはあの銀行って職業は成り立たないんだから。

 ところが今、みんな借りない。誰もお金を借りようとしない。少なくても預金する人は多いけども、借りる人がいなければ銀行は全部潰れちゃうんですよ。その借りてくれる人を探している金が年間約30兆円ぐらい。借りてくれる人が足りない。約30兆。年によって違うけど。ね? 誰かがそれを借りてくれない限りは30兆分だけデフレになりますから。

 それを借りてくれてるのが政府。政府が借りて、皆さんが貸してんの。ということは、皆さんが貸してるということは、円で貸してるんだからね。円で貸してんだよ。日本の国債の94%は日本人が買ってます。残り6%は外国人が買ってるけれども、その人も円建てで買ってるから。だから100%、円で賄われてると思ってください。

 ギリシャと同じみたいになって大変なことになると叫んでた、まだ叫んでるけど、元財務大臣経験者という方がいらっしゃいますが、ギリシャは、ギリシャ発行の国債のうち、ギリシャ人が買ってるのが3割です。残り7割は、ギリシャ人は買ってくれないから、しょうがないからギリシャ政府は国債相場に出す。国債市場に出す。国債市場は、みんなお金持ちは、ギリシャ人の政府なんて信用できねえなあと、こう眉に唾つけてみんな見てるもんだから、だれも買わないから、ギリシャはその金利を上げにゃいかん。今、13%。ちなみに日本の国債は0.9とか1.0ですよ。13倍から15倍違うんだよ、金利が。したがって、日本という国は、間違っても日本の政府が借金して皆さんが借金してるのではない。

 円で当然賄われているから、いざ満期になったときはどうすればいいか。そりゃ日本政府がやってんだから、日本政府は印刷して返すだけですから、あんた。だって日本円なんだから。簡単なことだろうが。外国に返すとなったらそりゃドルにかえないかんよ。ユーロにかえないかん。ギリシャなんかみんなそうです。全然違います。だから返さなくていい。

 いやしかしそんなことを言っても財政は破綻すると大蔵省(※ママ)が言ってますというけど、15年前、武村正義という人がいて、いやまだ死んでおられませんから生きておられますが、武村正義さんという、時の大蔵大臣、細川内閣だったか羽田内閣だったかでおられて、財政破綻宣言(※ママ)というのを言ったんですよ。そのとき、日本のGDPは500兆です。今とほとんど変わりません。500兆。いいですか、500兆ですよ。そのときの国債発行高は450兆だった。今、900兆ですからね。あのころは今の半分よ。稼ぎは500兆、変わらず。破綻してないじゃない。倍になったんだよ。

 しかも金利はどうか。あのころは金利は3.2ですよ、たしか。今1%。おかしいじゃないのよ。どうして。会社の内容が悪くなったら金利は上がるのが当たり前だろ。何で日本だけ下がるんだ、あれ。世界中、内容がいいんだって。大蔵省がえらく危機感をあおってみたり、ね? 新聞はわけのわからない、政治部は経済がわかったようなつもりで書いてみたり、ね? それをまたわかったつもりで読んでみたりする人がいて、話がどんどんどんどんエスカレートしてるけれども、現実問題、金利は下がっとる。上がる上がるって20年間ずうっと下がったよ。ほとんどずうっと一貫して下がったね、金利は。

 それが日本っていう国の持っている力ですよ。皆さんの力だよ、これ。政治家の力でも何でもない。これは国際マーケットが決めてんだから。こんな景気が悪いのに円が上がるって、ほかの国の通貨のほうがもっと悪いから。ほかの国の経済がもっと悪いからこうなってるだけで。ぜひ、その点を考えて。決して悪くないということ。まずこれだけは頭に入れて。

 家庭で考えたらわかりやすいよ。父ちゃんが「会社が困ってんだ、ちょっと母ちゃん金貸してくれ」って言って、母ちゃんが金利取るか? なかなか、父ちゃんに貸した金を取り返しもしにくいし、ね? なかなかそういうようなぐあいに……。だって、郵便局に預けてんだって国債を買ってんだって、相手が国だったら同じことでしょうよ。だから左のポケットから右のポケットに入れかえたって、世界中はそれを知ってるから、「あいつら、円だけでやってんだろ」ってみんな思ってんですよ、世界中でこういうことをやってる人は。だから、幾ら大変だ大変だって言ったって、世界中は日本の国債を買いたがるんですよ。金利がこんなに安いのに、間違いなく。

 そして円は、ついこないだまで240円だったんだぜ。今、83円、4円、5円。これはもうえらいことですよ。そういうぐらいになってくりゃあ、じいっと持ってたら、そら、どんどんどんどん、円で持ってりゃ、円の値打ちが上がっていきゃあ、外国人はそれを持ってたほうがいいもん。高くなるんだから。そういうことを計算して、世界中のお金を持ってる人たちはお金を動かしてる。ぜひ、そこのところだけは頭に入れといてもらうと。

 帳簿に例えるのとお母ちゃんから金借りる話と、まあこれぐらい因数分解してわかりやすくすると、大体通じてもらえんじゃないかと思ってんですけれども。